2024年2月20日火曜日

剣の時代の終焉

マタイのよる福音書の26章47節から57節には、時の権力者たちが、イエス・キリスト様を裁判にかけ、処刑するために、イエス・キリスト様を捕まえに来たときの様子が書かれています。このキリストを捕らえるために集まった人たちは、剣や棒を持っていました。抵抗したら、力ずくで捕らえるつもりだったようです。

 その時、キリストの弟子の一人が、剣を抜いてイエス・キリスト様を捕まえに来た人たちに斬りかかって行きました。彼もまた、力には力で対抗しようとしたのです。その様子を見ていたイエス・キリスト様は、ペテロを諫めてその剣を納めさせます。そして、こう言われました。「剣を取る者はみなつるぎで滅びます」と。

 キリストの時代の権力者たち、イエス・キリスト様を捕えようと企てた人たちは、パリサイ人と呼ばれる人や律法学者と呼ばれる人、あるいは、神殿に仕える祭司たちでした。つまり、宗教的指導者たちがイエス・キリスト様逮捕の首謀者だったんですね。彼らは、キリストを捕らえ、十字架につけたので、とても悪い人間のように思いますが、しかし、実際は、自分たちが信じるユダヤ教の伝統を、自分たちに一生懸命守り行って生きようとしていた人たちでもあったのです。そして、それが絶対に正しいと信じていた。

 ところが、イエス・キリスト様は、そのような生き方とは、全く違った生き方を人々に示したのです。それは、この指導者層の人たちが絶対に正しいと思っていたことを否定していることになります。実際、キリストは、パリサイ人や律法学者たちを厳しく非難しています。そんなわけで、パリサイ人、律法学者、祭司たちは、共謀してイエス・キリスト様を捕らえ、殺そうとしたのです。それは、自分たちが、絶対に正しいと思うからです。そう思うからこそ、剣、つまり、力に訴えてでも、イエス・キリスト様を捕らえ罰しようとしたのです。

 人間、この自分は絶対に正しいと思うことほど恐いものはありません。自分が絶対に正しいと思えば、相譲ることも出来ませんし、相手を裁き赦すこともできません。最後は力と力でぶつかるか、絶交状態になったりもします。そういった意味では、イエス・キリスト様の弟子も、自分たちの方が、絶対に正しいと思っていたんだろうと思います。だから、剣を抜いて斬りかかっていた。

そう言った人たちを見て、イエス・キリスト様は。「剣を納めなさい。剣を取る者はみなつるぎで滅びます。」とそう言われるのです。それは、自分が絶対に正しいと思うことの愚かさ、そして恐ろしさを私たちに、教えてくれる言葉でもあります。

 人間は、だれも完全な人はいませんよね。過ちや間違いを犯すものです。なのに、人と接するときには、そのことを忘れ、自分の正当性ばかりを主張してしまいがちです。それは、相手と自分を比べて、自分の方が正しいとそう思うからです。けれども、そんなときに、相手と自分を見比べるのではなく、神と言う存在を心に思いめぐらしてみたらどうでしょうかね。聖書の神は聖く義しいお方で、平和を愛する神です。その神の前に立って、自分自身を顧みるならば、私たちは、自分の至らなさや愚かさ、あるいは、心の醜さといったものを、認めざるを得ないように思うのですが、どうでしょうか。それは、まさに罪人としての私たちの姿なのです。

 私たちは、人を見て自分が正しいと思うとき、相手を裁き場合によっては、拳を振り上げ、心の中で剣を抜いて、自分の正しさを押し通そうとします。それは、力と権力によって支配するこの世界の中に生きる私たちの姿です。「この世」という世界が、力ある者、権力あるものが弱く小さいものの上にたち、この世界を治め支配するからなのです。だから、私たち人間は、力を欲し、権力を求めるのです。それが、より高見に登ることだと思い込んでいるのです。

 しかし、それは誤った生き方です。神が、ご自身に似たものとなるために神の像(かたち)を与え創造された人間本来の姿ではなく、過った姿なのです。そのような私たちを神は、欠けだらけの「わたしたち」の愛し、神の子として生きるものとするために、ご自分の一人子を十字架で死なせたのです。
 この深い愛で、私たちは愛されている。もちろん「あなた」も愛されています。この神の罪を赦す愛で愛されていると思うと、「わたしたち」は、振り上げていた拳を降し、抜いた剣を鞘に納めざる得なくなるのではないかと思うのです。

もし「あなた」が、まず「あなた」から人を裁くのを止め、拳を振り上げる止め、剣を抜かなくなったら、きっとあなたの周りの世界は少しずつ変わっていくだろうと思います。それは力と剣の時代が終わりをつげ、謙遜と愛の世界の始まりなのです。ですから、どうか、この「わたしたち」の愛する愛の神を、「あな」がこころに信じ、受け入れ、この神を心に想いながら生きて欲しいのです。

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