2023年12月15日金曜日

神秘と神秘的なもの

 「神秘と神秘的なもの」


昔、神学校の学生の頃、臨死体験ということについていろいろと考えることがありました。臨死体験というのは、事故や病気で死線をさまよった後に、命が救われた人が、その死線にある最中に見た幻影です。そしてその幻影はかなり似通った共通性が見られます。ところが共通性があるのですが、その共通性は、ある特定の集団にかぎられているのです。具体的に言うならば、日本人の経験する臨死体験と西洋人が経験する臨死体験は全く違っています。つまり、臨死体験はある種の集合体を形成しているのです。
 神学校で神学生として学ぶということは、将来は牧師になるという志のもとで学んでいるということです。あるいは牧師にならなくても、何らかの形で教会や宣教の場で働くということを意識していると言えます。私の場合は牧師になるという明確な思いがありましたので、このような死という問題にきちんと向き合い考えなければならないと感じていましたので、臨死体験ということにも関心を持ったのです。
 そこで私は、医師の方に臨死体験について医学的な面ではどのようにとらえているのかを聴きました。するとその医師の方の答えは、「医学では、臨死体験ということが、脳のどの部分で起こるのかということは明らかにすることができる。しかし、またどうしてそのような現象が起こるのか、またおこるようになったのかについては、医学でえkはわからない」というものでした。とても真摯なお答えだと思います。
 私たちの世界は、神秘的な事柄と神秘があふれています。科学は、神秘的な事柄を明らかにしてくれます。たとえば、月が満ち欠けをするなどと言うことは太古の人にしてみれば神秘な出来事だったであろうと思いますし、日食なども不思議な事だったろうと思います。ですから、そのようなことが基になった神話や宗教的儀礼が行われるようになったりしてきたのです。しかし、科学は、月が満ち欠けする理由や、日食がなぜ起こるかについてを明らかにしてきました。そうすると、それまで神秘的であった出来事は神秘ではなくなってしまうのです。それは、神秘そのものがなくなってしまったということではありません。神秘的な事柄と神秘とは非常に似通ってはいますが、全く同じではないのです。
 科学は神秘的な事柄を神秘的にしているベールをはがすことができます。しかし、神秘そのものに分け入ることができません。神秘的な事柄は神秘を指し示す神秘の類比ではあっても神秘そのものではないのです。
 科学は、「わたしたち」により多くの知識を与えてくれますが、科学では得ることのできない知識、すなわち神秘が、「わたしたち」の周りにはあるのです。科学では得ることのできない知識は、言葉で言い表すことができません。ですから、絵や音楽といった芸術的表現にならざるを得ません。あるいは言葉で伝えるとしても、それは詩や物語と言った文学的表現にならざるを得ないのです。だからこそ、宗教には宗教儀礼と言った儀式が伴い、そこの神話が生まれるのです。
 キリスト教におけるイエス・キリスト様というお方。このお方の生涯は神話ではなく歴史的事実です。しかし、そこには神話的がまとわりついています。その中のあるものは、神秘的な事柄で、今の科学的知識から見れば、こういうことなのだろうと推測できるものもあります。しかし、それはイエス・キリスト様というお方が神秘そのものであるということを指し示す類比であって、イエス・キリスト様という存在そのものが神秘なのです。たしかに、イエス・キリスト様というお方を社会学や心理学という化額は、分析的に語ることはできるでしょう。しかし、神の御子が人とのなったこの世界にお生まれくださったというクリスマスの出来事は神秘です。そしてイエス・キリスト様という存在そのものは神秘そのものなのです。
 神秘は頭で理解できる範疇のものではありません。心で感じ取るものです。そして、神という存在も、神の御子であるイエス・キリスト様の存在もまた神秘であった、頭で理解するのではなく心で感じ取ることなのです。この科学が明らかにする神秘的事柄が神秘そのものを指し示すということを私の友人の岩本遠億牧師が「光合成の神秘」という短いメッセージの中で分かりやすい光合成という科学的事柄を通して話してくれています。この岩本牧師のショートメッセージは、下記のアドレスをクリックし、新しく開かれた『366日元気の出る聖書の言葉』の頁にある「光合成の神秘」というタイトルのところにある▶マークをクリックすると聞くことができますので、併せてお聴きください。

https://podcasters.spotify.com/pod/show/genki-seisho/episodes/ep-e2d8qf6?fbclid=IwAR0uCZ2BvR3F9600bXxqnssntR_Ltb2YIzvD1YCtiNB2KPmFL6KsGz1CuN0

この岩本牧師のショートメッセージは、岩本牧師の著書『366日、元気の出る聖書の言葉』にあるものを音声にしてお伝えしているものですが、岩本牧師の御許可をいただいて転載したものです。

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